スポーツとスポーツユーザーのためのイノベーション
私たちにとって、イノベーションとは何でしょうか?それは、スポーツをする方の日々のトレーニングに役立つ小さな、あるいは大きな、メリットです。 イノベーションは、習慣をポジティブに促進、改善、変化させます。イノベーションは時に製品の価格にも影響しますし、スポーツをする場所を保護するために使われることもあります。つまり、イノベーションにはさまざまな形があるのです。
モンブランの麓にあるのどかな場所
私たちの国際デザインセンターは、2014年11月より、ハイキングやキャンプ等のアウトドア製品を開発するためのインスピレーションが生まれる場所になっています。
フランス(より正確にはパッシー)のモンブランの麓にある専用施設に、バッグやテントを設置しています。
50,000m²以上の敷地に15,000m²の施設を構える国際デザインセンター「マウンテンストア」では、アウトドアスポーツファンのために400人以上のスタッフが働いています。
これは、Decathlon(デカトロン)の各チーム(Quechua(ケシュア)、Forclaz(フォルクラ)、Wedze(ウェッゼ))のスペシャリストたちが調和した真のエコシステムです。
ここは、山やアウトドアができる場所に近い重要な場所であるのと同時に、デザインや研究における真の「スイスアーミーナイフ」でもあるのです。
工業用プロトタイプのワークショップをはじめ、極めて現代的で最先端の、時にはユニークなツールの使用もできる素晴らしい環境がととのっています。また、それらを使って製品を作り上げ、改良していく愛好家や技術者が集まっています。
このマウンテンストアの立地は、実用面や物流面に優れているだけでなく、開発チーム(パタンナー、エンジニア、デザイナー、プロダクトマネージャーなど)が自然と触れ合えることを可能にしています。私たちは、オフィスの中でも外でも、常に成長を求め活発に活動しています。私たちは(滑りやすい道、日当たりの良い牧草地、湿った草地、乾燥した岩場など)の恵まれた環境で製品を保証の確認をすることができます。
湖、森、渓流、トレイル、小道など、アウトドアスポーツのあらゆるフィールドが身近にあるのです。
"山の近くにオフィスを構えるメリットは、あらゆるアウトドアスポーツに適した恵まれた地形にアクセスし、ユーザーの観察、テスト、地形の調査のができることです。私たちは、オフィスから半径10〜20km圏内の渓谷で、ほとんどすべてのテストを行っています。"
イノベーションに貢献するノウハウとチーム
私たちのオフィスでは、プロジェクトグループ(ビジネスユニット)が制作の指揮をとっています。これは、機敏かつ自律的なデザイナーからなる小規模なチームです。
各グループには、プロダクトマネージャー、プロダクトデザイナー、3Dデザイナー(製品モデルの制作、外観デザイン担当)、プロダクトエンジニア、実地試験エンジニアなど、あらゆる専門家が集結し、約10名のメンバーで構成されています。
また、繊維製品の場合はスタイリストやパタンナーも参画します。さらにプロトタイピストと、そのクリエイティブな仕事を補完するバイヤー(製品供給の保証人)やマーチャンダイザー(お客様のニーズに合った製品をすばやく見つけられるよう、製品の見せ方を熟知したプロ)もチームに携わっています。
こうした情熱的で才能のあるメンバーが、山に近い花崗岩の香りが漂う広い共有のオープンスペースで、一緒にテーブルを囲み働いています。
全員がトレンド、特にアウトドアの動向をチェックしているのはもちろん、製品の購入後に寄せられた意見もしっかりとチェックしており、特にプロダクトマネジャーは注意深く精査しています。
これらのご意見は、製品の開発・改良のための重要な情報源となります。 その一つひとつを分析し、絶えず製品に修正・改良を加えています。
各プロジェクトグループでは、製品とイノベーションに注力するクリエイティブな人材と、経済的な制約をクリアする専門家が、それぞれ役割を分担しています。
このようにして、Decathlon(デカトロン)は自社製品・取扱い製品に関わらず、オンラインや店舗で提供する製品の一貫性を確保しているのです。ハイキングやキャンプの製品開発のためにチームとして同じタイプの製品ごとに取り組んでいます。
私たちの目標は、 常にお客様のニーズや要望を技術とイノベーションによって実現し、より低コストかつスマートで賢い、独創的な製品によって、お客様の生活をより豊かなものにすることです。
イノベーション製品の研究開発
製品の開発には、デザインから製品化まで、平均して約18カ月を要します。 ただ、たとえスピード感をもって進める方法を知っていても、本当にイノベーティブな製品になると4、5年かかることもあります。
なぜなら、新しい「2 SECONDS EASY」や屋上テント「Van 500」など、通常とは異なるプロジェクトでは、じっくり取り組む方法ことの重要性を理解しているからです。
開発の各段階では、試験やプロトタイプの作成が行われます。あまり複雑でない製品(ジャケット、寝袋、バックパック)であれば社内で開発できますが、例えばハイキングブーツのソールのように金型が必要な場合は、外部の工房に依頼する必要があります。
"試作では、製造経験のあるパタンナーやメソッドエンジニアと共同で、2次元モデルから3次元モデルへと作り上げていきます。"
こうした試作作業は、3つある工房(工業用プロトタイプ工房)のうち、繊維、アクセサリー、テントに特化した1,000m²以上の広さを有する工房で実施されます。
各工場内には、あらゆる作業が可能な「ファブラボ」(3Dプリンター)、「パーツバンク」(生地、ファスナー、ストラップなど)、高性能の工具が用意されています。
しかし、私たちの強みは、何よりもこれらのツールを操作し、素材を扱うスキルと、刺激的な環境に身を置き、それぞれの分野の第一線で活躍するプロトタイピストとメソッドエンジニアがいることです。もちろん、これらの工房はプロダクトエンジニアも利用でき、ソリューションの設計、修正、テスト、さらにはお客様の声などを聞くためのライブチャットまで行うことができます。
このように、すべてのチームが同じ場所に集まっていることが、私たちの大きな強みなのです。
素材やパーツに関するあらゆる事柄について、リールに拠点を置く専門チームが最適な部品や素材を選択・開発しているため、グループ内の全ブランドの時間を大幅に節約できることはもちろん、共同購入による節約も実現しています。
独自のカタログを持ち、その内容を常に充実させていくことは、開発のあらゆる段階において協議を重ねながら、イノベーションの本質的な側面をさらに強化することを意味します。
パッシーにある拠点のラボに加え、リールのDecathlon(デカトロン)本社にある「スポーツラボ」でも、私たちのチームはその恩恵を受けています。
グループ内で最も有名なこのラボは、広さ800m²以上、約40人のエンジニアと研究者を抱え、生産スケジュールとは必ずしも直結しない、非常に特殊な科学的問題やテーマを分析しています。
ラボは4つの部門に分かれています。形態学(特に3D解析)、運動科学、熱的快適性(4つのチェンバー)、行動・感覚科学です。
最後に、この研究開発プロセスの中に、アフターサービスという重要な考え方があります。
返品はすべて一元管理され、私たちのもとに戻ってきます。Decathlon(デカトロン)の店舗に持ち込まれた欠陥のあるジャケットは、当社のエンジニアによって回収、分析され、研究開発の全プロセスが完結します。
必要であれば、品質アラートを発動し、一定の返品率に達した時点で生産を停止することも可能です。
ラボテストと実地試験のドリームペアで実証
Quechua(ケシュア)では、実地試験エンジニア(IET)が、製品とお客様をつないでいます。
製品の開発プロセスの初期段階から、特に比較対象となる1つまたは複数の基準を設定し、テストを可能にするためのプロトコルを定義することが重要です。
プロジェクトグループのエンジニアは、プロトタイプができあがる前から、今後行われるであろうテストの準備を進めています。
靴の履き心地のように一般的に知られているものもあれば、「小石の侵入を防ぐ」など、一からプロトコルを作り上げる必要があるものもあります。
試験には大きく分けて、ラボで機械を使って行うものと、実地で人間が行うものがあります。
まず、パッシーのラボ(工房とテストラボを合わせた面積:約2000m²)では、プロトタイプを切断、粉砕、ねじり、引き裂き、さらには踏みつぶすためのあらゆる種類の機器が備えられています。
なかでも最も印象的なのは「シャワー試験」でしょう。
テントの耐久性と防水性をテストするために特別に作られた環境で、激しい嵐を再現できる巨大な部屋で行われます。
透湿性や快適性など、より主観的な基準を評価するには、ユーザーによるテストも欠かせません。また、被験者の意見を聞かずに行う客観的なテスト(例えばセンサーを装備して行うテスト)にも、ユーザーの協力が不可欠です。
そのため、IETでは平均して週に1回、さまざまなタイプや運動強度のテストを実施しています。被験者1人あたり10分程度の室内でのテストから、数週間にわたるノンストップのテスト(例えば、砂漠でのトレッキングや氷の上でのテスト)まで、その内容は多岐に渡ります。
しかし遠出をする前に、50,000m²の敷地にあるマウンテンストアに用意されたリアルサイズの遊び場(建物周辺にトレイルやその他のテストルートが敷かれており、一般人もアクセス可能)や、もちろん周辺の山々でもテストを行います。
テストの結果、統計、概要は、プロダクトエンジニアおよびプロジェクトグループ全体で活用され、改めて新しいプロトタイプを作り、繰り返し試験を行うことができるようになっています。
"テストは数日かけて、グループで行うのが理想的です。 旅行代理店のように、お互いを知らない人たちでも、スポーツの楽しさやQuechua(ケシュア)を応援したいという気持ちを分かち合えるようなつながりを作っていきたいと思います。"
共創によって作られる、半ば公然の秘密のブーツ
製品から色の選択まで、新しい製品を作る過程、あるいは既存の製品を改良する過程において現場の人を巻き込みたいという、以前からあった思いを実現するため、2017年、共創プラットホームを強化しました。
専用のプラットフォームにより、愛好家を募って意見をいただいたり、テストミッションに参加していただくことが可能になりました。
プロダクトマネージャーや実地試験エンジニアは誰でも募集広告を出すことができ、また誰でも応募することができるので、とても効果的です。
私たちは大きなコミュニティを持ち、私たちが開発する製品に興味を持つ人々をターゲットにしています。
"最初のアイデアは、いつもお客様のニーズから生まれるのです。次に、それを追求し、イノベーションを起こし、既成概念にとらわれない考えを持つことは、まさにDecathlon(デカトロン)のDNAです。どのブランドもテストを行いますが、その多くはテクニカル・パートナーに頼っているのに対し、Decathlon(デカトロン)はお客様を積極的に巻き込んでいます。"